『店、始めます。吉祥寺で。』 原田郁子

2010年。今までほったらかしにされてた事や、うやむやにされていたことが目の前に現れてきたり、同じような気持ちを持つ者同士が、まったく新しい「うごき」を始めたり、あちこちでそういうことが起き始めています。でっかいカンパニーやお金持ちの大人たちはみんなどっかへ消えちゃったり、しがみつこうと必死だったり、でも、子供だった私たちは案外冷静で、ようやく自分たちのやり方で居場所をつくることができるんだろう。そういう時代がきたんだろう、って思ってる。そんな矢先、見えない縁の糸は弧を描き、唐突に、わたしのところへやってきた。今年のお正月寒い寒い晩のこと。内見に行ったとき、その場所が、「たーすーけーてーえー」と言っているような気がした。人の気持ちが離れた場所ってこんな悲しいんだ、と思った。あまりに現実離れしてて、そうかと思ったら、現実を叩きつけてくるような、私の「苦手」なことがあとからあとから吹き出てくる話でもあったけど、それでも何故か「こーゆーこともあるのかな」と素直に思う自分がいた。そして、「思い」とかそーゆーのも、いったん全部洗い流してしまいたい。隅々まで新しい風を入れたいな、とほとんど直感で思っていた。再生していくには時間がかかるし、たくさんの力が必要だから。わたしと、わたしの妹のなぁちゃんと、わたしの事務所と、それから、それぞれのタイミングで集まってきた同志たちと、つながりの切れない近しい人たちと、ゆかりのある人たち、そしてこれから集まってきてくれるだろう人たちとともに。店を始めてみることにしました。人生でこんなに頭つかったことないっす•••という怒濤のまいにち、は、まだほんの始まりに過ぎない、ということが恐ろしくもあるけれど、たくさんのときめきと恐怖をこめて、5月、「キチム」という名のスペースをスタートさせます。たべてのんでみてきいて、ちゃんとそこに人の顔がみえる場所。驚きや発見、ささやかな喜び、血の通った時間が流れていけば、いいなと思う。「燃え尽きるまでとーつーげーきいいぃー!」というたぐいのものではないからね、こればっかりは。エネルギーの使い方が難しいけれど、長い時間をかけて、人が場所をつくり、場所が人をつくり、たくさんのことがこれから始まるんだろう。2010年、かすかな希望と夢をこめて。「キチム」です。末永く、どうぞ、よろしく!

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